公開: 2026年7月22日(記載の制度情報は2026年7月22日に、道路交通法施行規則の条文をe-Gov法令検索で、国家公安委員会告示第63号・警察庁の通達/Q&Aを原文(PDF)で確認)

アルコールチェックの義務化で検知器を買おうとすると、法令には「国家公安委員会が定めるもの」を使うと書いてある——では、その「定めるもの」とは何なのか。「認定品を買わないと違反になるのでは」と不安になった方も多いはずです。結論を先に言うと、法令上の要件は告示に書かれた1行の機能要件だけで、機種の指定も国の認定制度もありません。この記事は、検知器を販売する立場ではない中立の立場で、条文と告示の原文・警察庁の通達とQ&Aだけを根拠に、要件の正確な中身と「では何を基準に選べばいいのか」を整理します。特定の製品の推奨・比較はしません。

先に結論
  • 法令上の要件は国家公安委員会告示第63号の1行だけ——「呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器」
  • 機種指定・国の認定制度・性能の数値基準はない。「国家公安委員会認定品」という制度は存在しない(業界団体の自主的な認定と混同しない)
  • 数値が出ない警告灯・警告音タイプでも要件は満たす。エンジン始動をロックするインターロック機能付きも含まれる
  • 個人で購入した検知器も、事業所の検知器と同等の管理下にある場合に限り使用できる。呼気を測定しないスマホアプリ単体は不可
  • 選ぶハードルは低いが、本当に重いのは買った後の「常時有効に保持」義務(取扱説明書どおりの管理・保守+定期的な故障確認)

前提——検知器を使った確認は2023年12月から義務

乗車定員11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上使用する事業所(いわゆる白ナンバーの事業所を含む)は安全運転管理者の選任が義務で、その業務として、運転前後の運転者に対する酒気帯びの有無の確認が定められています。確認は目視等に加えてアルコール検知器を用いて行い、内容を記録して1年間保存します。目視等による確認と記録は2022年(令和4年)4月1日から、アルコール検知器を用いた確認は2023年(令和5年)12月1日から義務化されています(警察庁「安全運転管理者の業務の拡充等」・2026年7月22日確認)。

※そもそも自社に選任義務があるか(台数基準・届出)は安全運転管理者の選任条件まとめの記事を、確認をサボった場合の罰則の全体像はアルコールチェック義務の罰則まとめの記事をどうぞ。

「国家公安委員会が定めるもの」の正体——条文の入れ子を解く

検知器の要件は、条文が2段の入れ子になっています。まず道路交通法施行規則 第9条の10 第6号が、安全運転管理者の業務をこう定めます(e-Gov法令検索・2026年7月22日確認)。

運転しようとする運転者及び運転を終了した運転者に対し、酒気帯びの有無について、当該運転者の状態を目視等で確認するほか、アルコール検知器(呼気に含まれるアルコールを検知する機器であつて、国家公安委員会が定めるものをいう。次号において同じ。)を用いて確認を行うこと。

この「国家公安委員会が定めるもの」の中身を定めているのが、国家公安委員会告示第63号(令和3年11月10日)です。本文は、次の1行がすべてです(警察庁掲載の告示PDFで2026年7月22日に原文確認)。

呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器

つまり「国家公安委員会が定めるもの」といっても、特定の機種リストや認定基準が定められているわけではなく、機器が備えるべき機能が1行で定義されているだけです。警察庁のQ&Aも「使用すべきアルコール検知器の性能は決まっていますか?」という問いに対し、この機能を有する機器であれば足りると答えています(警察庁Q&A(PDF)Q3・2026年7月22日確認)。

要件は1行だけ——3つの要素に分解する

告示の1行を分解すると、要件は次の3つの要素でできています。

さらに警察庁の現行通達(令和6年12月27日付「安全運転管理者による運転者に対する点呼等の実施及び酒気帯び確認等について」)は、アルコールを検知するとエンジン(原動機)を始動できないようにする機能を持つもの——いわゆるアルコール・インターロック——も検知器に含まれることを明示しています(同通達(PDF)2(3)ア・2026年7月22日に原文確認)。

結局どれならいいのか——OK/NG早見表

タイプ・使い方法令上の扱い根拠
呼気式で濃度の数値が表示される一般的な検知器○ 要件を満たす告示第63号
数値は出ず、警告灯・警告音でアルコールの有無だけを示すタイプ○ 要件を満たす(有無「又は」濃度)告示第63号・警察庁Q&A Q3
アルコール検知時にエンジンを始動できなくするインターロック機能付き○ 検知器に含まれると明記令和6年12月27日通達2(3)ア
運転者が個人で購入した検知器△ 条件付きで可——安全運転管理者が故障の有無を定期確認するなど、事業所の検知器と同等の管理下にある場合に限る警察庁Q&A Q4・同通達2(3)ウ
呼気を測定しないスマホアプリ単体(体調の自己申告のみ等)× 要件を満たさない(呼気中のアルコールを検知する機能がない)告示第63号(本記事による整理)
故障したままの検知器× 「常時有効に保持」義務に反する(故障がないものを使用しなければならない)施行規則9条の10第7号・同通達2(3)イ

※「法令上の扱い」は本記事が一次資料から整理したものです。個別の機器・運用の適否は管轄の警察署に確認してください。

誤解されやすい3つのポイント

① 「国家公安委員会認定」の検知器は存在しない

「国家公安委員会が定めるもの」という条文の響きから「国の認定品リストがあるのでは」と思われがちですが、告示が定めているのは機能要件だけで、国が個別の機種を認定・検定する制度はありません(2026年7月22日に告示原文・警察庁Q&Aで確認)。市場には業界団体(アルコール検知器協議会)による自主的な認定を受けた製品がありますが、これは団体独自の品質認定であって法令上の要件ではなく、認定の有無で法令適合かどうかが決まるわけでもありません(2026年7月22日に同協議会サイトで確認)。品質の目安のひとつとして参考にするのは自由——という位置づけが正確です。

② 高価な機種でないと違反、ではない

法令は検知器の価格・精度・センサー方式について何も定めていません。したがって「この価格帯以上でないと法令違反」ということはなく、逆に「この機種なら法令クリア」という宣伝文句も、要件自体は1行なのでどの呼気式検知器でもほぼ差がつきません。機種による違いが出るのは、法令適合ではなく精度や耐久性、そして日々の運用のしやすさです(選び方は第6章)。

③ 「要件が緩い」=「管理も緩くていい」ではない

買うときのハードルが低い一方で、法令が明確に義務づけているのは買った後の管理です。施行規則9条の10第7号は検知器を「常時有効に保持すること」を義務とし、警察庁Q&A Q3も、取扱説明書に基づき適切に使用・管理・保守し、定期的に故障の有無を確認し、故障がないものを使用しなければならないとしています。安い・高いにかかわらず、この管理義務は同じ重さで掛かります(詳細は第7章)。

法令から逆算する選び方チェック5点(中立版)

本記事は特定の製品を推奨・比較しません。その代わり、法令と公的資料から逆算して「自社の運用に合うか」を確認できるチェックポイントを挙げます。どの製品を選んでも法令要件の最低ラインは同じなので、差がつくのはここです。

買った後が本番——「常時有効に保持」の義務

施行規則9条の10第7号は、記録・1年保存とあわせて「アルコール検知器を常時有効に保持すること」を義務づけています。その意味は現行通達が明確にしています(令和6年12月27日警察庁通達2(3)イ・2026年7月22日に原文確認)。

「常時有効に保持」とは、正常に作動し、故障がない状態で保持しておくことをいう。このため、アルコール検知器の製作者が定めた取扱説明書に基づき、適切に使用し、管理し、及び保守するとともに、定期的に故障の有無を確認し、故障がないものを使用しなければならない。

実務に落とすと次の3点です。

検知器が壊れたまま放置されていれば「常時有効に保持」の不履行です。確認・記録義務の不履行がどのように罰則へつながり得るか(公安委員会の是正措置命令→命令違反で罰金、という経路)はアルコールチェック義務の罰則まとめの記事で条文ベースで解説しています。

よくある質問

Q1. 安いアルコール検知器でも法令違反になりませんか?

法令が求めるのは告示第63号の機能要件だけで、価格・精度の数値基準・機種の指定はありません。この機能があれば価格にかかわらず法令上の要件は満たします。ただし、取扱説明書に基づく管理・保守と定期的な故障確認を行い「常時有効に保持」することが別途義務です。

Q2. 「国家公安委員会認定」のアルコール検知器はありますか?

ありません。告示は機能要件を1行定めているだけで、国が個別の機種を認定・検定する制度は設けられていません。業界団体による自主的な認定制度はありますが、法令上の要件ではありません。

Q3. 数値が表示されない警告灯・警告音タイプでもいいですか?

法令上の要件は満たします(有無「又は」濃度)。使用すべき検知器の性能は決まっていないことは警察庁Q&A Q3でも明示されています。ただし直行直帰などの非対面確認では測定結果を確認・報告させるため、結果の伝えやすさは運用面で確認してください。

Q4. 従業員が個人で買った検知器を使ってもいいですか?

検知器は基本的には自動車の使用者(会社)が購入すべきものとされていますが、各事業所の個別の事情により必要がある場合には、安全運転管理者が故障の有無を定期的に確認するなど、事業所の検知器と同等の管理が行われているものに限り、使用して差し支えないとされています(警察庁Q&A Q4・令和6年12月27日通達2(3)ウ)。

Q5. スマホアプリだけで検知器の代わりになりますか?

なりません。告示が求めるのは「呼気中のアルコールを検知する機能を有する機器」であり、呼気を測定する機能を欠くアプリ単体では要件を満たしません。検知器と連動して測定結果や記録を管理するアプリの利用自体は問題ありません。

検知器を選んだら——点検の記録まで残せる無料ツール

要件を整理すると、検知器選びで悩むポイントは実は少なく、本当に手間が掛かるのは毎日の確認・記録と、検知器の点検の継続だと分かります。そこは無料ツールで省力化できます。

まとめ

出典(一次情報)

本記事は上記の法令・公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の事業者への法的助言ではありません。個別の機器・運用の適否や違反時の取り扱いは事情により異なり、制度は変更される可能性があるため、実際の判断は必ず最新の公式情報と管轄の警察署・公安委員会・専門家の案内に従ってください。


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