公開: 2026年7月19日(記載の制度情報は2026年7月19日に、道路交通法・同施行規則・同施行令の条文をe-Gov法令検索で、国家公安委員会告示・警察庁の通達/Q&A・警察庁公表資料を原文で確認)

「アルコールチェック、正直やっていない日がある。バレたら罰則があるのか?」——白ナンバー(自家用)の車を使う事業所から、検索でもっとも多く聞かれる疑問です。答えは単純ではありません。酒気帯び確認や記録の義務そのものには、道路交通法上の直接の罰則規定が見当たらない一方で、放置した事業者に罰金が届く経路が別に3つ用意されています。この記事では、道路交通法の条文・国家公安委員会告示・警察庁の通達とQ&Aという一次資料だけを根拠に、罰則の全体像と、あわせて質問の多いアルコール検知器の法的要件を1ページに整理します。

先に結論
  • 運転前後の酒気帯び確認・記録・1年保存の義務そのものに、直接の罰則規定は確認できない(道路交通法施行規則9条の10第6号・7号に対応する罰条なし)
  • ただし安全運転管理者の選任義務違反は50万円以下の罰金。さらに公安委員会の解任命令・是正措置命令に従わない場合も50万円以下の罰金——チェック体制の不備はこの経路で罰則に届く
  • 選任・解任の届出義務違反は5万円以下の罰金
  • これらには両罰規定があり、担当者個人だけでなく法人(会社)にも罰金刑が科され得る
  • 警察庁の通達(令和6年12月27日)は、業務中の飲酒運転を検挙したら「背後責任について徹底した捜査」を行い、安全運転管理者の選任・業務実施状況を確認するよう全国の警察に指示している——「罰則がないから大丈夫」は通用しない
  • アルコール検知器は「呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音・警告灯・数値等により示す機能」があれば足りる(国家公安委員会告示)。機種指定・性能認定制度はない。ただし「常時有効に保持」(=故障がない状態の維持・定期的な故障確認)が義務

まず前提——何が義務化されているのか(30秒おさらい)

乗車定員11人以上の自動車を1台以上、またはその他の自動車を5台以上使用する事業所は安全運転管理者の選任が義務で、その業務として運転前後の運転者に対する酒気帯びの有無の確認(目視等+アルコール検知器)、内容の記録と1年間の保存、検知器を常時有効に保持することが定められています(道路交通法74条の3、同施行規則9条の10第6号・第7号。e-Gov法令検索で2026年7月19日確認)。施行時期は、目視等による確認と記録が2022年(令和4年)4月1日、検知器を用いた確認が2023年(令和5年)12月1日です(警察庁「安全運転管理者の業務の拡充等」・2026年7月19日確認)。

※そもそも自社に選任義務があるか(台数基準・届出)は安全運転管理者の選任条件まとめの記事で、記録に書く法定8項目は記録簿の書き方の記事で解説しています。

【本題】確認・記録の義務そのものに「直接罰」はあるのか

結論からいうと、酒気帯び確認をしなかった・記録をつけなかった・保存しなかったという違反そのものを処罰する罰則規定は、道路交通法に確認できません(2026年7月19日にe-Gov法令検索の現行条文で確認)。

理由は条文の構造にあります。酒気帯び確認・記録は「安全運転管理者の業務」として施行規則9条の10に定められていますが、道路交通法の罰則(第9章)がこの業務の不履行を直接罰する条文を置いていないためです。実際、記録簿について解説する県警の公式Q&Aにも、確認・記録義務それ自体の罰則は示されていません。

ただし、これは「サボっても何も起きない」という意味ではありません。次の章のとおり、別の条文から罰金に届く経路が3つあります。また、法律上の義務であることに変わりはなく、公安委員会は安全運転管理者を選任している使用者や安全運転管理者に対して必要な報告や資料の提出を求めることができます(道路交通法75条の2の2第1項・2026年7月19日確認)。

それでも罰則に届く3つの経路【罰則マップ】

違反罰則根拠条文会社にも罰金(両罰)
安全運転管理者・副安全運転管理者の選任義務違反50万円以下の罰金道路交通法119条の2あり(123条)
公安委員会の解任命令(74条の3第6項)・是正措置命令(同第8項)に従わない50万円以下の罰金道路交通法119条の2あり(123条)
選任・解任の届出義務違反(15日以内の届出をしない)5万円以下の罰金道路交通法120条第2項第3号あり(123条)

経路① 選任義務違反: そもそも安全運転管理者を選任していなければ、それ自体が50万円以下の罰金の対象です(道路交通法119条の2)。この罰則は2022年(令和4年)10月1日施行の改正で5万円以下から引き上げられました(警察庁ページで2026年7月19日確認)。

経路② 解任命令・是正措置命令: ここが「チェックをサボった場合」に効いてくる経路です。公安委員会は、安全運転管理者が業務(酒気帯び確認・記録を含む)を遵守していないため自動車の安全な運転が確保されていないと認めるときは、使用者に解任を命ずることができ(74条の3第6項)、また使用者が管理者に必要な権限を与えず・必要な機材を整備していないため安全な運転が確保されていないと認めるときは、是正に必要な措置を命ずることができます(同第8項)。これらの命令に従わなかった場合が50万円以下の罰金です(119条の2)。つまり「確認・記録の不履行→即罰金」ではなく、「不履行→公安委員会の命令→命令違反で罰金」という二段構えになっています。ただしこれは条文構造の説明であり、個別事案の取り扱いを保証するものではありません。判断に迷う場合は管轄の警察署に確認してください。

経路③ 両罰規定: 上記の罰則にはいずれも両罰規定(123条)が適用されます。従業者や代理人が業務に関してこれらの違反行為をしたときは、行為者本人に加えて法人(会社)・事業主にも罰金刑が科され得ます(123条の対象に119条の2と120条第2項が明記されていることを、2026年7月19日にe-Gov現行条文で確認)。

検挙されたら「背後責任」を捜査される——警察庁通達の中身

「命令が来てから直せばいい」と考えるのは危険です。警察庁が全国の警察に出している通達「安全運転管理者による運転者に対する点呼等の実施及び酒気帯び確認等について」(令和6年12月27日付・警察庁丁交企発第352号/丁交指発第226号)は、運用方針としてこう明示しています(2026年7月19日に原文確認)。

業務中の飲酒運転等を検挙した場合には、その背後責任について徹底した捜査を行い、安全運転管理者の選任の有無やその業務の実施状況について確認を行うこと。

さらに、飲酒運転等の発生原因が使用者側(安全運転管理者等に必要な権限を与えていなかった等)にある場合には、74条の3第8項の是正措置命令の検討を行うことも指示されています。つまり、従業員が1件飲酒運転で検挙されただけで、「選任していたか」「確認・記録をやっていたか」が警察に洗われる建て付けです。日々の記録は、義務の履行を示す事実上の唯一の証拠になります。

飲酒運転が起きてしまった場合の罰則(参考)

チェック体制の話とは別に、実際に飲酒運転が起きた場合の罰則も押さえておきましょう(いずれも2026年7月19日にe-Gov現行条文で確認)。

行為罰則根拠条文
酒酔い運転(アルコールの影響で正常な運転ができないおそれがある状態)5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金117条の2第1項第1号
酒気帯び運転(呼気1Lあたり0.15mg以上等)3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金117条の2の2第1項第3号(基準値は施行令44条の3)
使用者等が酒気帯び・酒酔い運転を命じ、または容認運転者と同水準(酒酔い=5年/100万円、酒気帯び=3年/50万円)+法人にも両罰117条の2第2項第1号・117条の2の2第2項第2号・123条

安全運転管理者等を含む「自動車の運行を直接管理する地位にある者」が飲酒運転を黙認した場合も下命・容認(75条1項3号)に当たり得ます。ここでも両罰規定で会社に罰金が及びます。

※拘禁刑: 2025年(令和7年)6月1日施行の刑法改正で懲役・禁錮が一本化された現行の刑名です。道路交通法の現行条文も「拘禁刑」表記であることを2026年7月19日に確認しています(旧表記「懲役」で書かれた解説サイトも多く残っています)。

アルコール検知器の法的要件——「国家公安委員会が定めるもの」とは

施行規則9条の10第6号は、検知器を「呼気に含まれるアルコールを検知する機器であつて、国家公安委員会が定めるもの」と定義しています。その中身を定めるのが国家公安委員会告示第63号(令和3年11月10日)で、本文は実質1行です(2026年7月19日に原文確認)。

呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器

つまり、この機能さえあれば法令上は足ります。ポイントを整理すると:

なお、記録簿に書くのは「酒気帯びの有無」と「確認の方法(検知器使用の有無を含む)」であり、測定数値の記録までは求められていません(詳細は記録簿の書き方の記事)。

「常時有効に保持」とは何をすることか

施行規則9条の10第7号は、記録・保存とあわせて「アルコール検知器を常時有効に保持すること」を義務づけています。この意味は通達が明確にしています(令和6年12月27日警察庁通達2(3)イ・2026年7月19日に原文確認)。

「常時有効に保持」とは、正常に作動し、故障がない状態で保持しておくことをいう。このため、アルコール検知器の製作者が定めた取扱説明書に基づき、適切に使用し、管理し、及び保守するとともに、定期的に故障の有無を確認し、故障がないものを使用しなければならない。

実務に落とすと、次の3点です。

検知器が壊れたまま放置していれば「常時有効に保持」の不履行であり、第3章の経路②(解任命令→命令違反で罰金)につながり得ます。

よくある質問

Q1. アルコールチェックをしていなかったら、すぐ罰金ですか?

確認・記録の義務そのものへの直接の罰則規定は道路交通法に確認できません。ただし、選任義務違反(50万円以下)・公安委員会の解任命令や是正措置命令に従わない場合(50万円以下)・届出義務違反(5万円以下)の罰則があり、両罰規定で会社にも罰金が及び得ます。また業務中の飲酒運転が検挙されると、通達に基づき背後責任(選任・業務実施状況)が捜査されます。個別の取り扱いは管轄の警察署に確認してください。

Q2. 検知器はどれを買えば法令クリアですか?

呼気中のアルコールを検知し、その有無または濃度を警告音・警告灯・数値等で示す機能があれば法令上は足ります(国家公安委員会告示第63号)。機種指定や国の認定制度はありません。ただし「常時有効に保持」が義務のため、取扱説明書に基づく管理・保守と定期的な故障確認ができる体制をセットで用意してください。

Q3. スマホアプリだけで検知器の代わりになりますか?

告示が求めるのは「呼気中のアルコールを検知する機能を有する機器」です。呼気を測定する機能を欠くアプリ単体では、この要件を満たしません。検知器と連動して記録を管理するアプリの利用自体は問題ありません。

Q4. 従業員が飲酒運転をしたら、会社も罰されますか?

使用者側が飲酒運転を命じ、または容認していた場合は、運転者と同水準の罰則(酒気帯びで3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)の対象となり、両罰規定により法人にも罰金刑が科され得ます(道路交通法75条1項3号・117条の2の2第2項第2号・123条)。命令・容認がない場合でも、通達に基づき安全運転管理者の選任や業務実施状況が確認され、体制不備があれば解任命令・是正措置命令の検討対象になります。

Q5. 罰則がないなら、記録は適当でもいいのでは?

記録は「義務を履行していたこと」を示せる事実上の唯一の証拠です。公安委員会は必要な報告や資料の提出を求めることができ(道路交通法75条の2の2第1項)、飲酒運転検挙時には業務実施状況が確認されます。記録がなければ「やっていなかった」と区別がつきません。毎日の記録こそが最も安上がりな防御です。

罰則対策の第一歩=記録を毎日残す(無料ツール)

罰則の仕組みを整理すると、行き着く結論はシンプルです——体制を整えて、毎日記録を残すこと

まとめ

出典(一次情報)

本記事は上記の法令・公表資料に基づく一般的な情報提供であり、個別の事業者への法的助言ではありません。罰則の適用や違反時の取り扱いは個別の事情により異なり、制度は変更される可能性があるため、実際の判断は必ず最新の公式情報と管轄の警察署・公安委員会・専門家の案内に従ってください。


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